2008年の20本
2009/01/01
あけましておめでとうございます。こんなわたしもぶじに新年を迎えられました。だれに感謝していいかわからないですが、ありがとうございます。
去年のうちにアップしようと思っていたら明けてしまったというかやや二日酔いであるわけですが、ともかくもこの一年に見た映画を振り返るよい機会なので、印象に深い20本をあげておきたいと思います。これはあくまでわたしの体験をふりかえるためのもので、いわゆる映画雑誌のベスト10選出とは質を異にしています。というのも、去年わたしはたぶん300本以上(スクリーンでは200本くらい)は映画を見たはずなのですが、旧作を中心にスケジュールを組んだので、見ていない新作があまりにも多いからです。
以下、だいたい見た順。
【洋画新作】
・『州議会』(フレデリック・ワイズマン)
・『4ヶ月、3週と2日』(クリスティアン・ムンジウ)
・『イースタン・プロミス』(デイヴィッド・クローネンバーグ)
・『誰でもかまわない』(ジャック・ドワイヨン)
・『ジャン・ブリカールの道程』(ジャン=マリー・ストローブ&ダニエル・ユイレ)
ワイズマンは旧作もろともいっきに見たので「新作」として見たという印象があまりないのですが、記録映像のみで起承転結さえ感じさせてしまうみごとな語り口と、議事堂建築の空間把握の仕方が突出しているように思われました。ドキュメンタリーではほかに『ジプシー・キャラバン』(ジャスミン・デラル)、『いま、ここにある風景』(ジェニファー・バイチウォル)、『スタンダード・オペレーティング・プロシージャー』(エロール・モリス)を次点としてあげたいところ。はじめの2本については「neoneo」に書いたのでそちらを参照いただくとして、モリスの新作は「難民映画祭」で一度だけ上映されたもの。前作『フォッグ・オブ・ウォー』から踏襲された、真正面から「顔」をとらえて観客と対峙させるインタビュー取材と、そこから明らかになる惨状に圧倒されずにはいられません。正直一度見たくらいでは何とも言えず、いつとも知れないロード・ショーを待ちたいと思います。
『4ヶ月、3週と2日』はペドロ・コスタの『骨』を少しだけ想起させる「冒険」映画の傑作。フィックス撮影と手持ち撮影のバランスがよく、文体としてどちらか一方に頼るケースはたくさんあると思いますが、冒頭のショットからして両方がうまく機能していると感じられました。フィックスでとらえられた誕生パーティのシーンや、バスに乗ろうと歩道橋を駆け抜けるシーンなどが印象深い。堕胎医やホテルのフロントの所作のディテールもよく描きこまれていると思います。ただ演出の統制がゆきとどいている分、堕胎と誕生パーティを並行的に描くところなど、ややあざとく見えるところもあるかもしれません。次の作品にはおおいに期待したいと思います。ちなみにフィルムセンターで上映されたムンジウ監督の前作を見逃して後悔。
そして『ジャン・ブリカールの道程』ですが、これはもう感動的というほかないです。長い移動撮影でとらえられたモノクロームの海と針葉樹の連なりは、ルプシャンスキー(撮影)の仕事のなかでも代表的なものになるのではないでしょうか。冒頭から続くほとんど同じ風景が、あるところで終わって島だとわかる、あの瞬間――その直後にジャン・ブリカールの声が重なる――に、ふるえがきました。
『イースタン・プロミス』、『誰でもかまわない』については当ブログでもテンション上がったまま書いたのでそちらを。
【邦画新作】
・『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(若松孝ニ)
・『憐 Ren』(堀禎一)
・『闇の子供たち』 (阪本順治)
・『トウキョウソナタ』(黒沢清)
・『PASSION』(濱口竜介)
邦画はわりと新作も見たほうかと思うのですが、阪本監督の『カメレオン』を見逃したにもかかわらず『闇の子供たち』をあげることに少々迷いがないわけでもありません。けれども『闇の子供たち』はやはり衝撃的な一本でした。当ブログにも書きましたが、映画は作品の完成度だけで判断されるべきものではなく、公開されることの意義や影響も含めて「映画」なのだとあらためて思うにいたりました。その意味では『靖国 YASUKUNI』(リ・イン)が持っている意義も大きいと思っています。
若松監督の新作は「俺が撮らないで誰が撮るんだ」という気概が3時間を貫いていて、ラストには思わず泣きました。荒削りな「いてまえ感」と、俳優陣の奮闘、情報処理の巧みさとが奔流となって轟く2008年の代表作だと思います。
ほかの3本については当ブログの過去の記事で。
【洋画・邦画旧作】
・『臨死』(フレデリック・ワイズマン)
・『世界の存続のために』(ピエール・ペロー&ミシェル・ブロー)
・『道中の点検』(アレクセイ・ゲルマン)
・『肉屋』(クロード・シャブロル)
・『あなたの目になりたい』(サッシャ・ギトリ)
・『ラ・ピラート』(ジャック・ドワイヨン)
・『不知火海』(土本典昭)
・『沓掛時次郎 遊侠一匹』(加藤泰)
・『彼奴を逃すな』(鈴木英夫)
・『早すぎる、遅すぎる』(ジャン=マリー・ストローブ&ダニエル・ユイレ)
VHS、DVDで見たものは入れていません。ようわからんようになるので(笑)。ここに選んだ10本は、つまりは東京の各映画館(ほか上映施設)の企画のすばらしさを同時にたたえるものとなるはずです。まずあげなくてはならないのは朝日新聞社とシネマテーク・フランセーズによる「フランス映画の秘宝」(於:有楽町朝日ホール)、そして映画美学校上映講座の修了企画「NFB/ONF ドキュメンタリズム」(於:アテネ・フランセ文化センター)。とりわけ後者は日本でほとんど関心を払われていないカナダのドキュメンタリーに光を当ててくれた点に感謝しています。あとおそらく去年いちばん通ったアテネの企画では「鈴木英夫」が(再)発見されたことが相当重要だと思います。『彼奴を逃すな』は結局阿佐ヶ谷で見たのですが、これはとんでもない傑作です。ほか、「ヤマガタin東京」はいよいよオリジナル企画も充実してきて、これは今後東京からヤマガタへの「逆輸入」もありえるのでは、と思わせます。
個人的には、ワイズマン、ゲルマン、イオセリアーニ、ドワイヨン、ストローブ=ユイレ、加藤泰など各氏の作品をスクリーンで見られたことがとてもうれしいです。あとそうだ、キム・ギヨンを忘れていた!
(09/1/1→1/4加筆)
去年のうちにアップしようと思っていたら明けてしまったというかやや二日酔いであるわけですが、ともかくもこの一年に見た映画を振り返るよい機会なので、印象に深い20本をあげておきたいと思います。これはあくまでわたしの体験をふりかえるためのもので、いわゆる映画雑誌のベスト10選出とは質を異にしています。というのも、去年わたしはたぶん300本以上(スクリーンでは200本くらい)は映画を見たはずなのですが、旧作を中心にスケジュールを組んだので、見ていない新作があまりにも多いからです。
以下、だいたい見た順。
【洋画新作】
・『州議会』(フレデリック・ワイズマン)
・『4ヶ月、3週と2日』(クリスティアン・ムンジウ)
・『イースタン・プロミス』(デイヴィッド・クローネンバーグ)
・『誰でもかまわない』(ジャック・ドワイヨン)
・『ジャン・ブリカールの道程』(ジャン=マリー・ストローブ&ダニエル・ユイレ)
ワイズマンは旧作もろともいっきに見たので「新作」として見たという印象があまりないのですが、記録映像のみで起承転結さえ感じさせてしまうみごとな語り口と、議事堂建築の空間把握の仕方が突出しているように思われました。ドキュメンタリーではほかに『ジプシー・キャラバン』(ジャスミン・デラル)、『いま、ここにある風景』(ジェニファー・バイチウォル)、『スタンダード・オペレーティング・プロシージャー』(エロール・モリス)を次点としてあげたいところ。はじめの2本については「neoneo」に書いたのでそちらを参照いただくとして、モリスの新作は「難民映画祭」で一度だけ上映されたもの。前作『フォッグ・オブ・ウォー』から踏襲された、真正面から「顔」をとらえて観客と対峙させるインタビュー取材と、そこから明らかになる惨状に圧倒されずにはいられません。正直一度見たくらいでは何とも言えず、いつとも知れないロード・ショーを待ちたいと思います。
『4ヶ月、3週と2日』はペドロ・コスタの『骨』を少しだけ想起させる「冒険」映画の傑作。フィックス撮影と手持ち撮影のバランスがよく、文体としてどちらか一方に頼るケースはたくさんあると思いますが、冒頭のショットからして両方がうまく機能していると感じられました。フィックスでとらえられた誕生パーティのシーンや、バスに乗ろうと歩道橋を駆け抜けるシーンなどが印象深い。堕胎医やホテルのフロントの所作のディテールもよく描きこまれていると思います。ただ演出の統制がゆきとどいている分、堕胎と誕生パーティを並行的に描くところなど、ややあざとく見えるところもあるかもしれません。次の作品にはおおいに期待したいと思います。ちなみにフィルムセンターで上映されたムンジウ監督の前作を見逃して後悔。
そして『ジャン・ブリカールの道程』ですが、これはもう感動的というほかないです。長い移動撮影でとらえられたモノクロームの海と針葉樹の連なりは、ルプシャンスキー(撮影)の仕事のなかでも代表的なものになるのではないでしょうか。冒頭から続くほとんど同じ風景が、あるところで終わって島だとわかる、あの瞬間――その直後にジャン・ブリカールの声が重なる――に、ふるえがきました。
『イースタン・プロミス』、『誰でもかまわない』については当ブログでもテンション上がったまま書いたのでそちらを。
【邦画新作】
・『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(若松孝ニ)
・『憐 Ren』(堀禎一)
・『闇の子供たち』 (阪本順治)
・『トウキョウソナタ』(黒沢清)
・『PASSION』(濱口竜介)
邦画はわりと新作も見たほうかと思うのですが、阪本監督の『カメレオン』を見逃したにもかかわらず『闇の子供たち』をあげることに少々迷いがないわけでもありません。けれども『闇の子供たち』はやはり衝撃的な一本でした。当ブログにも書きましたが、映画は作品の完成度だけで判断されるべきものではなく、公開されることの意義や影響も含めて「映画」なのだとあらためて思うにいたりました。その意味では『靖国 YASUKUNI』(リ・イン)が持っている意義も大きいと思っています。
若松監督の新作は「俺が撮らないで誰が撮るんだ」という気概が3時間を貫いていて、ラストには思わず泣きました。荒削りな「いてまえ感」と、俳優陣の奮闘、情報処理の巧みさとが奔流となって轟く2008年の代表作だと思います。
ほかの3本については当ブログの過去の記事で。
【洋画・邦画旧作】
・『臨死』(フレデリック・ワイズマン)
・『世界の存続のために』(ピエール・ペロー&ミシェル・ブロー)
・『道中の点検』(アレクセイ・ゲルマン)
・『肉屋』(クロード・シャブロル)
・『あなたの目になりたい』(サッシャ・ギトリ)
・『ラ・ピラート』(ジャック・ドワイヨン)
・『不知火海』(土本典昭)
・『沓掛時次郎 遊侠一匹』(加藤泰)
・『彼奴を逃すな』(鈴木英夫)
・『早すぎる、遅すぎる』(ジャン=マリー・ストローブ&ダニエル・ユイレ)
VHS、DVDで見たものは入れていません。ようわからんようになるので(笑)。ここに選んだ10本は、つまりは東京の各映画館(ほか上映施設)の企画のすばらしさを同時にたたえるものとなるはずです。まずあげなくてはならないのは朝日新聞社とシネマテーク・フランセーズによる「フランス映画の秘宝」(於:有楽町朝日ホール)、そして映画美学校上映講座の修了企画「NFB/ONF ドキュメンタリズム」(於:アテネ・フランセ文化センター)。とりわけ後者は日本でほとんど関心を払われていないカナダのドキュメンタリーに光を当ててくれた点に感謝しています。あとおそらく去年いちばん通ったアテネの企画では「鈴木英夫」が(再)発見されたことが相当重要だと思います。『彼奴を逃すな』は結局阿佐ヶ谷で見たのですが、これはとんでもない傑作です。ほか、「ヤマガタin東京」はいよいよオリジナル企画も充実してきて、これは今後東京からヤマガタへの「逆輸入」もありえるのでは、と思わせます。
個人的には、ワイズマン、ゲルマン、イオセリアーニ、ドワイヨン、ストローブ=ユイレ、加藤泰など各氏の作品をスクリーンで見られたことがとてもうれしいです。あとそうだ、キム・ギヨンを忘れていた!
(09/1/1→1/4加筆)
コメント
コメントの投稿
トラックバック
http://rhgn.dtiblog.com/tb.php/148-8c653fe5



TOP