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HAGINO Ryo
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『ノン子36歳(家事手伝い)』

舞台挨拶で主演の星野源氏が「30代女性の希望は、僕ではなく松山ケンイチさんではないでしょうか(笑)」と正確に指摘していたように、『ノン子36歳(家事手伝い)』は、『人のセックスを笑うな』(井口奈己監督/07)と重なりあうところが多い。両者とも関東の片田舎を舞台に選んだ、30代後半のすこしくたびれた女性と、20代はじめの不器用な青年との恋愛劇である。女がともにタバコをくゆらすところまで同じだ。けれども、うまそうに吸っているのは断然『人セク』の永作博美だ。ラジオを点け、服を脱ぎ散らかし、ロッキング・チェアに身を任せながら深く煙を吸い込むすばらしいショットに比べれば、坂井真紀が境内や縁側で吸うタバコはどれもあんまりうまそうでない。肺に届かない。タバコをうまそうに吸わせられるかどうかは、映画の生命線だといってよい。もちろん今回の坂井真紀はタバコの味さえ満足に感じられない役どころでもあるわけで、その不感症めいた惰性的欲求は映画の主題と通じ合う、にしてもそう思う。
正直にいって、このフィルムは『人セク』に遠く及んでいないと思う。「境内」、「縁側」、「タバコ」という強力な映画的アイテムがそろっていながら、画面にまったく緊張感を感じられない。人物造形がすごく雑で、星野源が世界地図を持ち歩いて「いつか世界に出たい」と口にするところなど、ちょっと信じられない。坂井真紀がそれに対して「世界かあ」と言うのはさらに信じられない。斉木しげるは怒っているだけ、宇都宮雅代は笑っているだけ。境内で柿を取ろうとして仲良く肩車する坂井真紀と星野源を斉木しげるが目にするシーンも、正直意図がよくわからない。祭りをめちゃめちゃにしてしまうラストの展開も、まったく理不尽で、その理不尽さを画面の強度に変えるだけの狂気を星野源の演技からは感じられず後味が悪い。すべてがおわったある日、鶏に成長したひよこに再会するという結末の発想は面白いのだが、あの日ひよこは大量にばらまかれたのであるから、その再会に感動がない。一匹だけ逃げ出して捕まえきれなかったひよこが、ふいに成長した姿で再会するというのがあるべき筋だと思う。好感を持ったのはキッチンで座り込んでビールを飲むシーンで、ふたりが順に座り込むタイミングや途中で冷蔵庫の「ブィーン」という音が鳴りやむタイミングなど絶妙だった。このフィルムが『人セク』を凌駕しているとしたら、坂井真紀がぜんぶ脱いでいることにつきる。ふたつの長いセックスシーンのうち、仕事の会話からなだれ込むようにして始まる鶴見慎吾とのシーンの執拗さはすばらしいと思うのだが、ボカシが入ってしまうキャメラワークに疑問を感じた。星野源とのシーンは、鏡の反射でみせる見せ方の趣味がよくないと思う。

(08/11/24 有楽町朝日ホール/第9回東京フィルメックス)


■ 『ノン子36歳(家事手伝い)』
 熊切和嘉監督/2008年/105分/35ミリ/カラー

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